(2009年7月1日の日記の再アップ)
お台場潮風公園での敵軍V作戦を察知した我が軍諜報部は、私、ぱく特務少尉に単独での潜入、偵察を命じた。
以下は、その報告である。
新宿での任務拝領後、小官は潜入ルートを自ら考えなければならなかった。
本来であれば、新橋経由でゆりかもめで向かうのが順当であろう。
しかし、これは極秘任務。
ウルトラ警備隊が新兵器の運搬を、カモフラージュのためにポインターですらない一台の乗用車で行い、宇宙人にその兵器を奪われるような愚をおかしてはならない。
ここは、慎重を期し、地下からの侵入を試みることにした。
りんかい線である。
小官がりんかい線に乗ったことがないから。
そんな理由ではない。
これは極秘任務なのである。
新宿から山手線で大崎に向かった。
もちろん、りんかい線に乗るためである。
大崎駅に到着し、小官は緊張をほぐすためにカフェで一服した。
緊張をほぐすためである。
決して、ヤニが切れたからではない。
誓って言う。ヤニが切れたからではない。
一服後、小官は、
10数年前とは大違いの大崎駅にとまどいつつも、りんかい線のホームを探したのである。
ちなみに、大崎駅は小官が通った士官学校の最寄り駅である。
りんかい線は地下鉄である。
小官はそれまでそう思っていた。
間違いではない。
しかし、りんかい線は大崎駅では地上にあった。
しかも、JRと相互乗り入れが行われている。
そう、埼京線に乗り入れているのである。
つまり、新宿から乗り換えなしで行けたのだ。
連邦の物量作戦の成果に驚愕を覚えつつも、若干の虚脱感にも襲われつつも、小官はりんかい線ホームに降りた。
ちょうど電車が出て行く。
次は・・・10分後。
10分。都内で10分待つというのは、なかなかの苦痛である。
小官は、再び上に上がり本屋に入った。
目的があったわけではない。手頃に時間をつぶせるからに他ならなかった。
しかし、そこで目にしたものは、
「ROCKI'N ON JAPAN特別号 忌野清志郎1951-2009」
即買いである。
あっという間に次の電車は来た。
読むことに夢中になってしまった。
ふと、顔を上げると、東京テレポート駅。
お台場の最寄り駅だ。
少々あせりつつも、電車を降りて地上に出た。
そこでは・・・・なんだろう、この既視感。
小官は、ここに立ったことがある。はるか昔に。
左手に観覧車が見えた。ヴィーナスフォートだ。
その瞬間、小官は思い出した。
10年前、ヴィーナスフォートが出来たばかりのころ、服飾販売任務に付いていたことがあった。。。
帰りになんとなく、歩いてお台場海浜公園まで歩いたことがよくあった。
あああ。あれから10年か。
なんだか感傷的になってしまったのだが、今は任務。
潮風公園に向かう。
フジテレビ、ホテル日航東京の脇を通る。
・・・・ちょっと遠い。
素直にゆりかもめで台場駅に行くべきだったかもしれない。
任務に支障をきたしかねない。
少なくない疲労が小官を襲う。
潮風公園を前にしても何も見えない。
V作戦はデマなのかもしれない。そんな不安に襲われた。
それでもなお、潮風公園の奥に進む。
木々の間を進んだ。
そして、突如視界が開けた。
そこに敵軍最新MSがあった。
戦闘を目的としているとは思えない配色、プロトタイプなのかもしれない、しかしフラッグシップモデルである可能性もすてることは出来ない。
どれだけの予算を組んで、作戦は遂行されているのだろうか。
想像だに出来ない。
新型MSはすでに立っている。
すでに稼働しているのだろうか、ハンガーの類いも見られない。
小官は、しばらく観察することにした。
動く気配は、ない。
ここで小官は気づいた。
潜入、偵察を命じられたのは、小官だけではないらしいのだ。
多くの、性別年齢を問わない多くの僚官がいた。
寒い時代だと思わずにいられない、年端のいかない子供もいる。年配の予備役とも思われる方もいる。
親衛隊の者もいるようだ。臭いで分かる。
全ての人が、新型MSを凝視し、写真を撮っている。
V作戦の重要性を物語っているようである。
この重要性を裏付ける証拠として、警備の厳重さがあげられる。
強固なバリケードが築かれており、我々はある程度の距離までしか近づけない。
しかし、中には警備兵が一人のみ。
我々が束になってかかれば、ついそう思ってしまう。
これだけの人数ならば、バリケードの突破も可能であろう。少なくない犠牲を払う必要はあるだろうが。
突破出来れば警備兵はひとり。しかも銃器の類いは一切持っていない。強奪も可能ではないか。
「手柄を立てちまえばこっちのもんだぜ。少佐だって手柄を立てて出世したんだ!」
心の中で、ジーンが叫ぶ。
が、そこで、
「待てジーン、命令違反を犯すのか!」
デニム曹長の声も聞こえた。
冷静になった。
いろんな可能性が頭を駆け巡る。
あの警備兵、素手で新型MSを守っているのである。
なんらかの裏付けがなければ、彼ひとりにまかされることはないであろう。
初老の男性警備兵だ。もしかしたら、東方不敗クラスの達人なのかもしれない。
素手でMSを守る男に対して、何の情報もなく挑むなど愚の骨頂だ。
ここで、冷静に任務を果たさねば、ジーンのように後ろから真っ二つにされかねない。
命拾いしたのかもしれない。
汗が出ていた。
これは、ねっとりした暑さからだけではないはずだ。
そして、
小官は、今後の戦局を左右しかねないこの新型MSの写真を多数撮り、帰還した。
10日後には、稼働を始めるという情報も入ってきている。
実戦に出るのも時間の問題であろう。
今度は、小隊を率いて行かねばならない。
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